片づけ導師さんのビジネスリーダーとしての資質、という話

著者さん、相当アタマいいわ…


写真は本文と関係ありません。ただのフリー素材です。


普段めったに本を読まない私ですが、こんまりさんの評価が国際的に高まっているというニュースを拝見し、さてはて何がそんなに世の女性たち(男性クライアントも少なからずいらっしゃるようですが)を惹きつけるのか…という興味本位から、初版出版から遅れること5年にして読んでみました。

私自身は散らかすこともありますが、 とはいえ「片付けられない」という悩みも持っていないので「こんまりメソッド」そのものにはあまり興味がない。どちらかというと、著者さん本人への興味で読みました。
なので、本稿では彼女の片づける方法については一切触れません。ここでは、著書から伺える著者さん本人について考察してみます。


右脳と左脳の高度な融合


著書を読み終えて、私が感じているのは以下のような項目です。

  1. 著者さんは「右脳と左脳のバランスがよく、双方の感覚が極端に高い」ということ
  2. その結果、一般の方からすると第六感を持っているようにも見える
  3. もし幼少期の体験が少し違っていたら、著名なビジネスリーダーになっていたんじゃないか

これらについて、少し深く考えてみたいと思います。


1. 右脳と左脳って?

右脳と左脳 / 手 Freepikによるベクターデザイン



 ちなみに私が認識している右脳と左脳の違いは

  • 右脳: 芸術、感性、感情などをつかさどるもの
  • 左脳: 言語、計算、論理などをつかさどるもの

です。


私がビジネスコンサルタントをしていた頃、この「右脳と左脳のバランス」は仕事で叩き込まれました。
問題分析、問題解決をしていく上で、理屈や論理的思考、言葉だけではダメ。 感性、ヒラメキ、カンだけでもダメ。その両方がバランスよく高度に融合する思考能力をクライアントは期待している、と。

どちらかというと左脳型で、論理的思考に極端に寄っていた私の思考回路はその頃にずいぶんダメ出しをされたものです。論理的に分析して自分なりの解を導いても「何か気持ち悪い」という理由で上司に突っ返された。「どこがどんな風に気持ち悪いのでしょう?」と聞いても「よく分からん。もうちょっと考えてみて」と言われるだけ。これ、右脳的です。

で、ウンウン唸って考えて捻り出しても進まないので、ディスカッションさせて頂いた中で上司が(今振り返って初めて言えることですが)左脳で考え始めると、私の論理の矛盾がポンと出てくる。そこで私も「なるほど…」となる。右脳と左脳を組み合わせた例です。

2. 著者さんの「左脳」


著者さんは、ご自身ひとりで(…もしかしたら一人ではないのかもしれませんが)この両方を、しかも相当高度に実施なさっています。
著書の中からの引用で、それを見てみます。まず、左脳的思考から。

つまり、人がモノを捨てられないのは、まだ使えるから(機能的な価値)、有用だから(情報的な価値)、思い入れがあるから(感情的な価値)。さらに手に入りにくかったり替えがきかなかったりする(希少価値)と、ますます手放せなくなるわけです。

捨てられない理由について、極めて論理的に要素分解しています。
(何が論理的かについては本稿の趣旨から外れますのでここでは割愛します)

また、同様に著書の中で以下のように読者に語りかけています。

ではなぜ、寝る前にリラックスしたいのですか?なぜ、ダイエットをしたいのですか? 自分が出した答えについて、「なぜ」を最低三回、できれば五回は、繰り返してください。

この「なぜ」の繰り返し、ビジネスコンサルタントの経験がある方や問題解決手法を勉強したことがある方はきっと聞いたことがあるはずです。そう、ロジカルシンキングや問題発見・解決法で必ず言われることです。

著者さんの経歴を詳しくは存じ上げませんが、もし著者さんが独力でこの思考方法にたどり着いたのだとしたら驚異的です。ビジネススクールの教授が論文でしたためたような思考法を、独自で編み出したということです。


3. 著者さんの「右脳」


さて次に、著者さんの右脳的な 記述の例をば。

じつは洋服をたたむことの本当の価値は、自分の手を使って洋服に触ってあげることで、洋服にエネルギーを注ぐことにあるのです。


…左脳人間かつ男性である私には、なかなか飲み込めない表現です。いったい何を言っているのだ?となってしまいます。

もうひとつ。

モノを一つひとつ手にとり、ときめくモノは残し、ときめかないモノは捨てる。モノを見極めるもっとも簡単で正確な方法です。

…なんですか、この似非科学的な表現は…?

まぁ、この表現についてはご本人も「あいまいな基準と思われるかもしれない」と述べておられるので、この表現が表層的に与えてしまう印象は把握しておられる、つまり意図的にこのような表現を使っておられるのだと思いますが、それにしても、です。

この2つは、著者さんの「右脳的直感を大切に」というメッセージではないかと感じました。


4. 高度に融合


右脳的表現に見られる、非常に直感的な印象を大切にしつつ、それに対して「なぜ?」を最低三回繰り返す。これ、私も経験ありますがそうとう大変です。脳みそが変な汗をかきます。だいたい、やり方がわからず上手く行きません。

しかしながら著者さんは、自ら考え抜くことでこれを深堀りなさっている。そして、著書の中で極めて整然とそれを記述している。「ときめき」という右脳的な、あいまいな基準に対して、左脳的に分解しながら、時にクライアントさんの実例を交えながら分かりやすく説明しています。並みのビジネスマンには出来ることではないです。すごい。


5. 第六感-心を読むような観察眼


著者さんがクライアントさんとやり取りした様子が、以下のように書かれています。

お客様がモノの山からひと通り「残す」「捨てる」を判断し終わったところで、私はあらためて「残す」コーナーからいくつかのモノを選び出すことがありま す。そして、「これと、これと、このTシャツ、あとこのニット、本当にときめきますか?」と聞きなおすと、お客様は目を丸くして驚きます。
「どうして分かるんですか? じつは、それらは全部、捨てるかどうか迷ったモノなんです」


 この後段で著者さんはモノに触れる際の手つきや目の輝きで分かる、と言っていますが、これは著者さんの経験の蓄積と右脳左脳の高度な融合によって分かるものなのでしょう。おそらく、著者さんは左脳的にクライアントさんの目や手つきを見ているわけではなく、右脳的に直感的にクライアントさんの挙動を捉えている。その中で見つかった「違和感」を元に左脳で考え、こういうことではないかという仮説を立て、実際に質問することでその仮説を検証している。

仮説の精度が高いため、クライアントさんからすると心を読まれたような気分になる。

これ、ビジネスコンサルタントの経験豊富な方が、クライアント企業の経営者等に信頼を勝ち取るところに似ています。
心を読まれると、人は通常その相手に畏敬の念を抱くようになります。「この人、何かすごい」と。

このあたりが、著者さんがクライアントさんに信頼され、名声を得た大きな理由なんじゃないかなぁ、と思います。


結論: ビジネスリーダーとしての素質


ここまで書いてきた通り、私がビジネスコンサルタントや経営者と触れ合う中で学んできた「左脳による論理的思考」と「右脳による気づき」が高度に融合し「片づけ」という問題を解決している。

著書によれば、幼少期に読んだ「捨てる技術」が著者さんのその後に大きな影響を与えているようですが、もしそのときに読んだ本が大前研一さんの「企業参謀」 だったら(まぁ中学生が読むような本ではないでしょうが…)、きっと大前研一さんを超えるようなビジネスリーダーになったんじゃないでしょうか。

片づけではないところでもし著者さんと出会えたらなら、ぜひ弟子入りしてみたいものです。






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