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7月, 2016の投稿を表示しています

越境社内DNSでAkamai化が逆効果になる事象を発見した

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まさかこんな影響があるとは思わなかった… サンフランシスコにある私のオフィスから、San Francisco Chronicleという新聞社のWebサイトへのtraceroute結果 ある日のこと、オフィスで仕事をしていて「どうもWebサイトが開くの遅いよな、ウチのオフィス…」とボンヤリ考えていました。 遅いけれども、別に開かないわけじゃない。ちゃんとWebサイトは表示される。でも、画像がちょっとずつ表示されたり(スパっ、と出るのではなく、がっががっ、と出る、と言えば伝わりますでしょうか)、リンクをクリックしてから一瞬、時間にして1.5秒くらいブラウザが考え込んでから次のページのロードが始まったり、といった具合です。 最初は「Wi-Fiが混雑してるんだろうな、どうせ」と思っていましたが、有線LANにしても同じく遅い。これは何かがおかしいぞ、ということで調べてみることにしました。 まずはPingとTracerouteだよね ネットワークエンジニアとしては、PingとTraceroute。最近はPingに応答しないWebサーバーも増えてきているので、インターネット上のHTTPを調べる時はいきなりTracerouteで途中の経路まで調べるのが私の中で常態化しています。 とりあえず遅いと感じたのが、私の地元にある地方紙新聞のSan Francisco Chronicle。さすがに地方紙だから地元にあるだろう、と思ってTracerouteしてみたら…。 その結果が、冒頭にも掲出したコチラ。 私のオフィスからwww.sfchronicle.comにtracerouteした結果(再掲) 異常が出ていること、お分かりでしょうか? 11ホップ目で、なんと日本のkddi.ne.jpを通っていて、その直前と直後で100ミリ秒(=0.1秒)のレイテンシ差が出ています。 そして最終到達点はAkamai。最初はなんでこんなことになるのか分からなかったのですが、この画像をFacebookにシェアしたところ、友人の一人から「AkamaiのDNSが日本のサーバーのIPを返している、ということだ」とのご指摘。 このご指摘でピンと来ました。これ、原因はウチの社内DNSです。 どういうことか、というと… セキュリティ的に詳

経営論連載Vol.3 - Coinの失敗事例に学ぶ、ビジネス論文の使い方

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わりとセオリー通りに見えるんだけれど クレジットカード、デビットカード、ポイントカードなど複数のカードを1枚にまとめられる製品として 大きな話題を集めたCoin。 出典: Coin社Webサイト Press kit より 2013年11月、ある起業家がCoinというクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げました。Yコンビネーター(シリコンバレーでは有名な、最近は日本でも有名なベンチャーキャピタル兼インキュベーション組織)を含む多数の投資家から資金を集め、かつクラウドファンディングプロジェクトでは350,000オーダー、1700万ドル (日本円で約20億円!)もの資金を集めたとされています(出典: recodeの記事内 で350,000オーダーが集められたと語られており、当時プレオーダーは1件$50だった)。 しかしながら、現在同社は フィットネストラッカーのFitbit社に買収 され、かつ現行製品であるCoin 2.0は売り切れ。さらに後継製品の開発は行わないと明言されているため、これは明確に「失敗」です。 アイデア、プロトタイプ、テスト、製品化。 豊富な資金、成功請負インキュベーター。 経営論連載の最終回は、典型的なシリコンバレーの成功要件を備えているように見えるこのCoinプロジェクトの失敗例を紐解きつつ、デザイン思考のような「ビジネス的な考え方」「方法論」の使い方に踏み込んでみようと思います。 他の連載は以下からどうぞ。 Vol.1 デザイン思考の3つの要素から見る、昔のビジネスコンサルティングの限界 Vol.2 デザイン思考の5つのプロセスから見る、日本のWebデザインの限界 なお本稿の執筆にあたり、サンフランシスコと東京を拠点とするブランド&マーケティングエージェンシー Btrax のCEO、 Brandon Hill氏のブログ から着想を得ました。ここにお礼申し上げます。 Coin社が失敗した理由 同社の失敗理由は様々語られていますが(前述のBrandonのブログが分かりやすいです)、私は「品質の低さ」が最大の要因だったと思います。 本稿の執筆にあたって英語のCoinレビューを数件読みました。いずれも、クレジットカー

経営論連載Vol.2 - デザイン思考の5プロセスから見る日本のWebデザインの限界

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Webデザイナーと名乗るからには デザイン思考の5つのプロセス。和訳は筆者による。 出展: An Introduction to Design Thinking PROCESS GUIDE なんだかんだ、私がWeb界隈のビジネスに身をおいてはや10年近く経ちました。生まれて初めてHTMLに触れたのは確か学生時代の1996年とか97年とかなので、それから20年くらい。まだCSSという規格がなかった時代に、テキストエディタ(メモ帳的なもの)でHTMLを打ち込んで自分のWebページを作ったものです。 あいにく私には絵心がなくセンスゼロだったので、制作方面では全く大成しませんでした。それゆえ、自分が仕事で関わったWeb制作はほとんど外部のWebデザイナーさんにお願いして作ってもらっています。そうして作ってきたページ数は、もう数えられませんが1,000ページは超えると思います。そして、お付き合いしてきたWebデザイナーさんも数十人になります。 その数十人の方々について「この方とはちょっと上手くやれないなー」とか「この方にはぜひ次もお願いしたい!」という感想は正直言うとありました。でも、今まではそれが何なのか、使う写真やイラストなどのクオリティ以外には何が良かった・悪かったのか、上手く言語化できませんでした。 連載Vol.2として、この違和感についてデザイン思考の5つのプロセスの観点でまとめてみようと思います。 その他の連載はこちらからご覧ください。 Vol.1 デザイン思考の3つの要素から見る、昔のビジネスコンサルティングの限界 Vol.3 Coinの失敗事例に学ぶ、ビジネス論文の使い方 そもそもデザイン思考って? デザイン思考そのものの解説はここでは控えますが、本論の入り口として、デザイン思考のビジネス応用提唱者 Tim Brown による説明 を引用します。 Design thinking can be described as a discipline that uses the designer’s sensibility and methods to match people’s needs with what is technologically feasible and what a viable

経営論連載Vol.1 - デザイン思考の3要素と昔のビジネスコンサルティングの限界

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昔、コンサルタントだったことがありましてね デザイン思考の3つの要素。ちなみにこれがデザイン思考のすべてではありません 先日、ひょんなことから現役の経営コンサルタントである方と酒杯を傾けながらお話する機会がありまして。 その時に、最近いろいろシリコンバレー流の考え方をインプットしている中で、 新しい事業価値の創造について ボンヤリ考えていたことが急に線でつながったので、それをまとめてみたいと思います。 (赤字部分、重要です。本論では、あくまで「新事業価値創出についてのみ」論じています。 その後、自宅のソファでふんぞり返りながら、一瞬眠りに落ちたりしながら考えると、どうも以下の三部作に分けるのがよさそうだ、と思い至りました。 Vol.1 デザイン思考の3つの要素から見る、昔のビジネスコンサルティングの限界 Vol.2 デザイン思考の5つのプロセスから見る、日本のWebデザインの限界 Vol.3 Coinの失敗事例に学ぶ、ビジネス論文の使い方 今日はこのVol.1について書いてみようと思います。 少しだけ昔話:2005年頃のビジネスコンサルティング 今をさかのぼること10年以上前のこと、私の転職活動中に、とある世界的な戦略コンサルティングファームのパートナー(一般に、コンサルティングファームにおけるコンサルタントの最上位職位)の方と面接をする機会がありました。 その際に、当時の私が疑問に思っていた質問をぶつけてみました。その時のやり取りは、おおよそ以下のようなものでした。 私 「戦略コンサルタントは、顧客と利害が一致しないことが強みでもありますが、同時に弱みでもあります。弱みは、コンサル案件の結論にコンサルタントは最終的に責任を持てない。ゆえに、本当の意味で顧客の価値創造が出来ない。なぜ、コンサルタントは責任を取らないのでしょう?」 パートナー 「それはコンサルタントのすることではないからです。事業の責任はクライアントにある。コンサルタントは、あくまで第三者の立場でクライアントに価値を提供することが仕事です」 私 「でも、コンサルタントに案件を依頼するクライアントは何かしらの価値創造を求めているわけですよね?真にクライアントの価値を考えるのであれば、コン