アメリカのピタゴラ装置 - Rube Goldberg Machineとは
本当はちょっと違うようだけど
自家製ピタゴラ装置 vol.1 のフィニッシュシーン |
最近、我が家で息子と一緒にピタゴラ装置を作るのが定番の宅内遊びになっているのですが。
こちらアメリカではなかなか本家のTV番組を見ることができないので、何か参考になる仕掛けはないかなぁ、とYouTubeなりインターネットなりで検索していたんですね。
そこで出会ったのが Rube Goldberg Machine (ルーブ ゴールドバーグ マシン)という言葉。
少し気になったので、調べてみました。
そもそも何よそれ?
今からさかのぼること100年ちょっと前のこと。アメリカはサンフランシスコにてRube Goldbergさんという方が生まれました。
その方は、とある風刺画というかヒトコママンガで有名になった方だそうです。
こちらの「自動ナプキン」という絵が割と分かりやすいので引用します。
自動ナプキンと名付けられたRube Goldbergさんの風刺画。引用元:Wikipedia |
A. まずスープをスプーンで口に運びます
B. それにより、この糸が引かれます
C. それにより、レードルがぐいっと持ち上がります
D. それにより、クラッカーが放り投げられます
E. それにより、オウムが持ち去ります
F. それにより、オウムの止まり木が持ち上がります
G. それにより、エサの種がこぼれます
H. それにより、バケツが下がっていきます
I. それにより、コードが引っ張られます
J. それにより、ライターが開き火が点きます
K. それにより、ロケットが着火し飛び立ちます
L. それにより、鎌が糸をひっかけます
M. それにより、糸が切られ、振り子時計が動き出します
そして、ようやくナプキンで口を拭くことができます。
文字で書くと分かりにくいですね。Rube Goldberg社のサイトに動画があり、とても分かりやすくなっています。
Rube Goldberg Machineとは「シンプルなことを、いかに複雑に実現するか」に主眼が置かれているそうです。彼が生きた時代(1883年~1970年)は産業革命後から第二次世界大戦後まで。機械化、工業化が進む世の中を揶揄した風刺画、ということが出来そうです。
この考え方は今でも生きていて、毎年「Rube Goldberg Contest」が行われています。2016年のテーマは「傘を開く」であることが発表されました。このコンテスト、評価基準も面白くて
- 日常、身の回りにあるもので構成されているか
- どれだけ笑えるか
- どれだけ芸術的で、うまく構築されているか
- どれだけ無駄に複雑か
で評価されるそうです。しかも、最低でも25ステップ以上はかけないと評価が下がってしまうとか。
傘を開くだけで25ステップって…楽しそうですね。
傘を開くためだけにどれだけ手間をかけるか?という、何というか、イグ・ノーベル賞的というか、あるいはテクノロジーの無駄遣いというか、大人が本気になってここまでやってそれだけかよ!的な笑いが、このRube Goldberg Machineの中心的な考え方かなぁ、と思います。
オンラインでも応募できるようですよ。ご興味のある方、いかがですか?
少し誤解も含んだ、独自の発展
さて、ではなぜピタゴラ装置がルーブ ゴールドバーグマシンに関連付けて語られているのか?(語られているからこそ、私がピタゴラ装置を色々見ていく中で出会ったと思っています)
これは私の推測ですが、おそらくRube Goldberg Machineを「色々なものの連鎖で、しかけがつながって流れていくさま」ととらえた人たちがいたのだと思います。これはRube Goldbergさんの意図とはもちろん異なるのだと思いますが、それはそれで独自に発展していったようです。
YouTubeで「Rube Goldberg Machine」で検索すると、いくつか出てきます。その中から私好みのものをいくつかピックアップしてご紹介します。
1. Hevesh5さんの「おみくじマシーン」
フォーチュンクッキーってあるじゃないですか。焼き菓子の。
あれを壊すだけのために、壮大な装置が組まれています。ハラハラドキドキ、ピタゴラ装置そのものです。
2. 2D Houseさんの「賢い旅に」
明確には語られていませんが、おそらくSamsungのデジカメ「NX」のプロモーション動画でしょうね。旅に出るならNX持っていこうね、というメッセージでしょうか。他にも、NXが軽いとか、連射可能とか、撮った画像を無線でタブレットに送れるよ、とか機能紹介も兼ねているのが秀逸。
それ以外にも「おお?!そう来る?」という仕掛けが満載で楽しめますよ。
3. 3Mさんの「3Mブランドマシーン」
今のところ私の一番のお気に入りがこれです。
「サイエンスは、私たちが一番大切にしている心臓部です。ほかの誰よりも、サイエンスを大切に扱っています」というメッセージとともに、科学の力で見えないものを見えるようにする、というコンセプトが説明されています。
最後のポストイットの滝(たぶん重力の可視化でしょうね)はちょっとズルいくらい圧巻です。あんなにたくさん買えねーよ(笑
結論
私がピタゴラ装置の好きな理由は「実は科学的だったり物理学的だったりすることをこっそり忍ばせた、子供が喜ぶ遊び」だから、です。
何気ないビー玉が転がる道でも慣性の法則がひそんでいたり、幾何学的な特徴が使われていたり、質量とか摩擦とかテコとか、そういうものが満載なんです。
Rube Goldberg Machineはおそらく本人の意図とは少し違う発展の仕方をしているようですが、そういう小難しいことをハラハラドキドキで楽しんでしまう、という意味では、現在みられる装置も同じようなものかな、と思います。