2015/12/19

Appleのメールマガジンをアメリカ版と日本版で比較してみた

翻訳コンニャク

Appleさんから12/18に配信された、クリスマスギフトのオススメメールマガジン


日本で生まれてアメリカで仕事をしていると、翻訳する、ということが頻繁に起こります。そして、翻訳というのは単なる「言語の置き換え」ではなく、翻訳元の言葉が持つ文化的背景というか、概念というか、考え方というか、感じ方というか…(まぁ、それを「メッセージ」と呼ぶことにしましょう)を、翻訳先の言語で表現する行為である、ということを最近よく考えます。


私が「マーケティングコミュニケーションが比較的上手な会社」だと思っているAppleさんから、たまたま同じタイミングでアメリカ版と日本版でメッセージが同じなメールマガジン(英語で言うとNewsletterですな)を受信しましたので、その英語と日本語での伝え方の違いを細かく見てみようと思います。


ちなみに、送られたメールマガジンの全体像はこちらです。さてさて、みなさんはどんな風にご覧になりますか?

2015/12/18に配信された、クリスマスギフトをアピールする
Appleのメールマガジン。左がアメリカ版、右が日本版です。

1. 件名


メールマガジンにおける件名の重要性は、ここで改めて語るまでもないでしょう。さて、Appleさんはアメリカの商売のピークシーズン終盤において、どんなふうにギフト提案を表現しているのでしょうか。


英語:Just the right gifts, just in time
日本語:最高のクリスマスギフト。まだ間に合います。

英語は「Just」を2回使って、うまく言葉遊びをしていますね。「ズバリ正解!」「それ欲しかったんだよ!」的なギフトを、「まさに今!」という感じ。ジャスト。

一方で、日本語の方はちょっと平坦ですね。でも、iPhone 3GS以降「iPhoneにはね」という表現を日本語で使ってきたApple Japanさん、なんというか、クールな…落ち着いた…口調は一貫しているように思います。日本語には言葉遊びはないけれど、賢い、でも「クリスマス」「間に合う」というキーメッセージはきちんと入っているように思います。


2. キーラインメッセージ



次に、本文トップにある大きい文字の「キーラインメッセージ」。

英語:Last-minute gifts that seem anything but last minute.
日本語:とっておきのギフトを、今からでも用意できます。

英語は、ここでも言葉遊びをしていますね。「Last-minute」を上手に2回繰り返すことで「まだ間に合うよ!」というメッセージを強調しているように思います。

Last minuteとは「ギリギリ、直前」というような意味です。「I'm sorry for my last minute change - 直前に変えちゃってごめんね!」というような使い方をしますかね。

そして「Anything but - 全くもって~でない」を組み合わせることで「ギリギリのプレゼント、でも、きっとそうは見えないよ」というような意味を表現しているように思います。上手ですね~。


一方日本語は、こちらも平坦な印象です。淡々と、でもまだ間に合うよ、というメッセージを、シンプルに。件名と同じメッセージを繰り返し。


3. リード文


続いてリード文です。上のスクリーンショットの、少し小さい文字の部分です。

英語:The holidays are around the corner, so order now to make sure your Apple gifts will arrive in time.
日本語:クリスマスはすぐそこです。Appleのギフトを今注文すると、クリスマスに間に合うようにお届けします。

ここは少し解説が必要でしょうか。

アメリカでは、最近は「クリスマス」という表現を慎む傾向にあります。おそらく宗教的な背景でクリスマスを祝わない、祝えない人への気遣いなのでしょう。あくまで平等に、単なる休暇シーズンとして表現。でも、もちろん分かる人にはそれがクリスマスギフトだって分かる…という背景があります。

ですが、日本ではそんな気遣いは必要ないのでしょう、ストレートに「クリスマス」と言っていますね。これもシンプルに。

そしてアメリカ日本どちらも「まだ間に合うよ!」という、件名も合わせると3回目の強調。これがこのメールマガジンのキーメッセージだということが既に分かりますね。


4. 本文1: ギフトカード


続いてこのメールマガジンのコア部分、次につなげる本文です。



まだ日本ではApple musicが立ち上がっていないのでしょうか、Apple music gift cardが画像から削除されていますね。それはさておき、メッセージは以下のようになっています。

英語:Give them something they'd give themselves.
日本語:選べる楽しさを贈れます。

英語は、これまた言葉遊び。Them, they, themselvesと、theyの派生語が3回も登場します。むしろそれを除けば、give, something, give しかありません。スゴイですね…。

一方、こちらも日本語はいたってシンプル。ギフトカードを贈るというのは、要するにカタログギフトのようなもの。贈られた金額の範疇で、好きなものを買える。その体験を贈りませんか?というメッセージですね。



5. 本文2: Apple Store app


最後に、本文後半のApple Store app、つまりiPhone/iPadで使うApple謹製ショッピングアプリの紹介部分です。



こちらは、小さい文字の部分をピックアップしてみます。

英語:With the Apple Store app, it's easy to shop, compare, and read reviews. So you can check everyone off your list and check out quickly. 
日本語:製品を買う、比較する、レビューを読む。Apple Store appを使えば、そのすべてが簡単です。だから、あらゆる人へのプレゼンをすばやく選んで購入できます。

英語は、またしても言葉遊び。checkを2回使っていますね。
プレゼントを贈る人リスト(日本で言うと年賀状送り先リストのような感覚でしょうか)に完了チェックすることができ、チェックアウト(つまりお会計)も素早くできる、と。リストのチェック、チェックアウト、同じcheckを違う意味でうまく使っています。

一方日本語は、こちらはほぼ英語の直訳。少しヒネリがないようにも思いますが淡々と書いていますね。


結論



以上のように細かく見ていった結果、以下のようなことが言えるのではないかな、と思います。

アメリカでのAppleのコミュニケーションは、言葉遊びを交えてキーメッセージを伝えている。日本的な感覚で言うなら「クールな大喜利」といった感触でしょうか。
日本でのAppleのコミュニケーションは、ひたすらシンプルに。シンプルに出来ないところは「シンプルに直訳」。

日本の大喜利もそうですが、「うまい!」と言わせるにはそこそこ知性も必要です。様々な言葉を様々に組み合わせ、思いもよらないつながりを見せることで「座布団一枚!」になる。
アメリカにおけるAppleのコミュニケーションには、そういう知性を感じます。


日本のAppleについては、やはり「シンプル」に尽きます。
無駄を削ぎ落したシンプルさは、Apple製品のひとつの特徴でもあります。初代Apple TVのリモコンがその代表例でしょう。
そのブランド要素をコミュニケーションの中に織り込んで、おそらくアメリカ主導で決まっているであろうコミュニケーションを日本向けにローカライズしているように見受けられます。


伝えているメッセージは単一。プレゼンテーションは、ブランドコンセプトから外れない範囲でローカライズ。

こうした手法は、参考になる企業も多いのではないでしょうかね、というお話でした。


2015/12/12

スマホカーナビの二大巨頭、WazeとGoogle mapsを比較する

どちらも便利ではあるのですが

二大カーナビアプリ、左がGoogle mapsで右がWaze

クルマを運転する機会が増え、そもそもカーナビ未搭載な中古車を買ったのでずっとスマホでカーナビをしておりまして。

日本にいたときから「ナビはGoogle maps最強」と思っていたのでこちらでも変わらず使っていたのですが、AutomaticとIFTTTで遊ぶことを考え始めた頃からWazeも併用しております。

2ケ月ほど使い込んだ結果、双方の長所・短所が見えてきましたので現時点の比較をまとめてみたいと思います。

※ちなみに、Wazeはイスラエル発祥のスタートアップですが2013年にGoogleに買収されています。買収から2年弱経過していますが、統合はあまり進んでいないようで…(そもそも統合する意図もあまりないのかもしれません)。現段階では、Google maps上にWazeの事故レポートや要注意情報を表示する、という緩い連携のみとなっています。


そもそもWazeって何よ?


Wazeが交差点の監視カメラを通知してくれた瞬間

もしかしたら日本ではあまり馴染みがないかもしれないので、ちょっとだけ紹介。

端的に言えば「ゲーム感覚でソーシャルに地図とリアルタイム交通情報を作り上げるアプリ」とでも言いましょうか。「Wikipedia的なカーナビ」とでも言いましょうか。


  • 地図データは基本的にユーザーからの投稿に基づく(ただし誰でも編集できるわけではない)
  • このアプリを起動しながら走ると、走行情報が自動的にインターネットに送られてリアルタイム交通情報を形成する
  • 例えば「警察がいるぞ!」とか「路肩にクルマが止まってるから気を付けて!」とか「事故!」みたいな情報を運転中にカンタンに(音声だけでも)ポストできる
  • ガソリンスタンドが近くにある場合、ガソリン価格をポストできる
  • それをWazeユーザーみんなで見られる


といったような機能があります。もちろん他にも色々ありますが、ここでは割愛しますね。

Wazeスコアのカンタンな説明。自分のいる州の上位10%のポイントに入るとアイコンがWarriorになる、とか、5%でKnightになるとか、そんなの。
ちなみにFacebookの友達リストを元に、友達と自分のポイントを比較して楽しむこともできます。



2013年には博報堂DYメディアパートナーズが業務提携しBtoB向けにサービスを検討、というニュースもあったようですがその後は特に報道もないですね。日本の皆さん、もし機会があればWazeの日本地図がどうなっているか、ぜひ教えてください。



Google maps vs Waze 勝敗やいかに!


さて、実際に使用してみて、それぞれが相手に対して優れている点は以下となります。


Google mapsいいね!その1: いるべき車線が分かる


全部で4車線あるうち、左2車線のどちらかに居てね、という表示


これ、かなり大きいポイントだと思います。特に見知らぬ土地を運転しているときには効果絶大。いったいどうやってこのデータ集めているんだろうと思うくらい正確です。

アメリカの場合は、よほどの大都市(ニューヨークのマンハッタンやロサンゼルスダウンタウンとか)でない限り高速道路の出入り口は右側にありますが、それでも出た後の車線は複雑で、全車線左折は出来るけど直進は右側だけ、といったこともあります。
また高速道路は片側4車線なんてザラで、多いところでは7車線(!)とかあったりします。どのくらいのタイミングでどの車線に居ればいいかが分かるのは非常に便利です。音声案内でも「左から2番目の車線にいてね」と教えてくれます。ホント凄い。

残念ながらこの点はWazeは対応していません。まぁ、ユーザーから走行中に車線の情報を集めることは相当難しいと思うので無理もないのでしょう。


Google mapsいいね!その2:北固定表示、進行方向表示、3D表示をカンタンに切り替え


ここは好みが分かれるところかとも思います。ちなみに私は北固定表示が好きで、そうでないと逆に道に迷うことも多いのですが最近は3D表示の情報量の多さも気に入っています。

あとスマホナビの弱点でもあるのですが、地下やトンネルに入ってGPSをロストすると結構致命的な状態になります。このとき、北固定であれば何となく自分の向いている方向から道を推測できるのです。


知らない土地を運転するときは北固定、慣れた道は3D表示、と使い分けができ、かつナビ画面上の方位磁針をタップするだけ。とってもカンタンです。

Wazeは、この設定変更をするためにはナビ画面から ナビボタン>設定ボタン>Advancedを選ぶ>Lock North-up modeをOff という4ステップが必要となり、ちょっと面倒です。



Google mapsいいね!その3:寄り道がカンタン(ただしAndroid限定)


これ最近知ったのですが、実はGoogle maps、運転中に「やべ、ガソリンないや」とか「目的地は変えたくないんだけどちょっとお昼ごはん食べたい」といった不意の要求に柔軟に対応してくれます。

ナビ中の寄り道機能。なぜAndroid限定なんでしょうね?

ナビ中に、右上の緑部分と地図部分にまたがるムシメガネアイコンをタップすると、この通り。ガソリンスタンドやレストラン、スーパーマーケット等を選んで、経路途中にある拠点を表示してくれます。
もちろん音声ガイド対応。これはとっても便利です。

この機能はWazeにはまだないようです。




Wazeいいね!その1:豊富な情報量


Wazeを使っていて一番便利なのは、やはり走行中に通知される豊富な情報量。以下のような情報は本当に助かります。


  • ここの渋滞、時速12マイルだよ
  • ここに警察いるよ
  • 路肩に止まっているクルマあるよ
  • 道路に轢かれてしまった動物がいるよ(残念なことに、アメリカではけっこうあるんです。リス、鳥、タヌキ、シカ(!)など…)
  • この交差点、カメラついてるよ


そしてこれらがユーザーからカンタンに投稿でき、かつ投稿するとポイントが大きく貯まるため、朝の通勤時間などは走る予定の道のことをつぶさに理解できてしまいます。なんて素晴らしい。


Wazeいいね!その2:地図がかなり正確


これは正直意外でした。ユーザーが投稿するベースの地図なので信頼性大丈夫?という気が最初していたのですが、特に私が住むような都市部はかなり正確です。
(そもそもGoogle mapsがどのように道路情報を集めているのか存じませんが…ストリートビューカーで撮った写真、あるいは衛星写真などから解析しているのでしょうかね?)

それもそのはず、地図の間違いを指摘すると、かなり大きなポイントをゲットでき、あっという間にランクを上げることが出来るのです。

実は最近、私が働いている場所のすぐ近くで道路規制の変更があり、一般車が入れなくなった区間があります。
いつも通る場所なのでそれをWazeにレポートしたところ、2日程度で地図が更新されナビゲーションでその道を案内することがなくなりました。そのレポートにより私のポイントは、日常運転して得られるポイントの数百倍をゲット。

こうしたゲーミフィケーション要素(ゲームのように楽しませること)をうまく使っているのがポイントなのでしょうね。

Google mapsは、交通情報こそリアルタイムなのですが規制情報や地図の間違い(というより変更)の反映はさすがにリアルタイムではないようです。


Wazeいいね!その3:慣れてくるとめっちゃ気が利く


これはWazeがカーナビ用途に特化しているからこそ可能なのでしょう。
日常よく「自宅へのナビを起動する地点」でWazeを起動すると「今から家に帰るの?」と提案してくれるのです。

職場からの帰宅時にWazeを起動した瞬間

こちらのスクリーンショットは、私が仕事を終えて帰宅するべくクルマに乗り込みWazeを立ち上げた直後。
想定所要時間、距離、経路上のレポート(真ん中やや先に警察いるよ、がレポートされています)、さらに「Go 20」と表示されているとおり、このまま20秒放置すると自動的にナビ開始です。なんて気の利くヤツ!

Google mapsは汎用地図アプリにナビ機能がついているわけで、さすがにここまで気が利いているわけではありません。
もちろん、Android全体をとらえればこうしたこともAIやセンシングで可能になるのかもしれませんが、いちアプリケーションにそこまで期待するのは難しいようですね。



結論


と、いうことで、それぞれについて3つほど「すごい!」という点を挙げてみました。
ちなみに私は


  • 慣れ親しんだ道はWazeで楽しみながら運転
  • 見知らぬ土地はGoogle maps北固定で車線情報を頼りに運転


という使い分けをしております。どちらが合うかは人や好みにもよると思いますので、特性をつかんでみるまで併用して絞り込むことをオススメしますよー、という話でした。