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経営論連載Vol.3 - Coinの失敗事例に学ぶ、ビジネス論文の使い方

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わりとセオリー通りに見えるんだけれど クレジットカード、デビットカード、ポイントカードなど複数のカードを1枚にまとめられる製品として 大きな話題を集めたCoin。 出典: Coin社Webサイト Press kit より 2013年11月、ある起業家がCoinというクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げました。Yコンビネーター(シリコンバレーでは有名な、最近は日本でも有名なベンチャーキャピタル兼インキュベーション組織)を含む多数の投資家から資金を集め、かつクラウドファンディングプロジェクトでは350,000オーダー、1700万ドル (日本円で約20億円!)もの資金を集めたとされています(出典: recodeの記事内 で350,000オーダーが集められたと語られており、当時プレオーダーは1件$50だった)。 しかしながら、現在同社は フィットネストラッカーのFitbit社に買収 され、かつ現行製品であるCoin 2.0は売り切れ。さらに後継製品の開発は行わないと明言されているため、これは明確に「失敗」です。 アイデア、プロトタイプ、テスト、製品化。 豊富な資金、成功請負インキュベーター。 経営論連載の最終回は、典型的なシリコンバレーの成功要件を備えているように見えるこのCoinプロジェクトの失敗例を紐解きつつ、デザイン思考のような「ビジネス的な考え方」「方法論」の使い方に踏み込んでみようと思います。 他の連載は以下からどうぞ。 Vol.1 デザイン思考の3つの要素から見る、昔のビジネスコンサルティングの限界 Vol.2 デザイン思考の5つのプロセスから見る、日本のWebデザインの限界 なお本稿の執筆にあたり、サンフランシスコと東京を拠点とするブランド&マーケティングエージェンシー Btrax のCEO、 Brandon Hill氏のブログ から着想を得ました。ここにお礼申し上げます。 Coin社が失敗した理由 同社の失敗理由は様々語られていますが(前述のBrandonのブログが分かりやすいです)、私は「品質の低さ」が最大の要因だったと思います。 本稿の執筆にあたって英語のCoinレビューを数件読みました。いずれも、クレジットカー...

経営論連載Vol.2 - デザイン思考の5プロセスから見る日本のWebデザインの限界

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Webデザイナーと名乗るからには デザイン思考の5つのプロセス。和訳は筆者による。 出展: An Introduction to Design Thinking PROCESS GUIDE なんだかんだ、私がWeb界隈のビジネスに身をおいてはや10年近く経ちました。生まれて初めてHTMLに触れたのは確か学生時代の1996年とか97年とかなので、それから20年くらい。まだCSSという規格がなかった時代に、テキストエディタ(メモ帳的なもの)でHTMLを打ち込んで自分のWebページを作ったものです。 あいにく私には絵心がなくセンスゼロだったので、制作方面では全く大成しませんでした。それゆえ、自分が仕事で関わったWeb制作はほとんど外部のWebデザイナーさんにお願いして作ってもらっています。そうして作ってきたページ数は、もう数えられませんが1,000ページは超えると思います。そして、お付き合いしてきたWebデザイナーさんも数十人になります。 その数十人の方々について「この方とはちょっと上手くやれないなー」とか「この方にはぜひ次もお願いしたい!」という感想は正直言うとありました。でも、今まではそれが何なのか、使う写真やイラストなどのクオリティ以外には何が良かった・悪かったのか、上手く言語化できませんでした。 連載Vol.2として、この違和感についてデザイン思考の5つのプロセスの観点でまとめてみようと思います。 その他の連載はこちらからご覧ください。 Vol.1 デザイン思考の3つの要素から見る、昔のビジネスコンサルティングの限界 Vol.3 Coinの失敗事例に学ぶ、ビジネス論文の使い方 そもそもデザイン思考って? デザイン思考そのものの解説はここでは控えますが、本論の入り口として、デザイン思考のビジネス応用提唱者 Tim Brown による説明 を引用します。 Design thinking can be described as a discipline that uses the designer’s sensibility and methods to match people’s needs with what is technologically feasible and what a viable ...

経営論連載Vol.1 - デザイン思考の3要素と昔のビジネスコンサルティングの限界

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昔、コンサルタントだったことがありましてね デザイン思考の3つの要素。ちなみにこれがデザイン思考のすべてではありません 先日、ひょんなことから現役の経営コンサルタントである方と酒杯を傾けながらお話する機会がありまして。 その時に、最近いろいろシリコンバレー流の考え方をインプットしている中で、 新しい事業価値の創造について ボンヤリ考えていたことが急に線でつながったので、それをまとめてみたいと思います。 (赤字部分、重要です。本論では、あくまで「新事業価値創出についてのみ」論じています。 その後、自宅のソファでふんぞり返りながら、一瞬眠りに落ちたりしながら考えると、どうも以下の三部作に分けるのがよさそうだ、と思い至りました。 Vol.1 デザイン思考の3つの要素から見る、昔のビジネスコンサルティングの限界 Vol.2 デザイン思考の5つのプロセスから見る、日本のWebデザインの限界 Vol.3 Coinの失敗事例に学ぶ、ビジネス論文の使い方 今日はこのVol.1について書いてみようと思います。 少しだけ昔話:2005年頃のビジネスコンサルティング 今をさかのぼること10年以上前のこと、私の転職活動中に、とある世界的な戦略コンサルティングファームのパートナー(一般に、コンサルティングファームにおけるコンサルタントの最上位職位)の方と面接をする機会がありました。 その際に、当時の私が疑問に思っていた質問をぶつけてみました。その時のやり取りは、おおよそ以下のようなものでした。 私 「戦略コンサルタントは、顧客と利害が一致しないことが強みでもありますが、同時に弱みでもあります。弱みは、コンサル案件の結論にコンサルタントは最終的に責任を持てない。ゆえに、本当の意味で顧客の価値創造が出来ない。なぜ、コンサルタントは責任を取らないのでしょう?」 パートナー 「それはコンサルタントのすることではないからです。事業の責任はクライアントにある。コンサルタントは、あくまで第三者の立場でクライアントに価値を提供することが仕事です」 私 「でも、コンサルタントに案件を依頼するクライアントは何かしらの価値創造を求めているわけですよね?真にクライアントの価値を考えるのであれば、コン...

アメリカ移住時の生活セットアップの流れをまとめてみた

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まえがき このブログ投稿は、2014年4月に私が日本からカリフォルニアに移住した際の経験に基づいています。法制度や行政の仕組みは変更になることがあるため、以下の内容が現在も同じであることは保証されません。 ※(2016/6/29) 末尾にカリフォルニア州での免許取得について追記しました。このポストの更新はしましたが、更新日までのすべての変更を網羅していることは保証されません。 まぁ、普通は大変よね 私の場合はカリフォルニアに前任者もおらず、会社内の第一陣として赴任したので相談できる人もいなかったため、自ら調べたり保険の販売エージェントや中古車ディーラーさん、不動産ディーラーさんに聞きながらひとつずつ進めていきました。 またWeb上にもブログ等で情報を上げている方もおられますが、私にとっては断片的で、例えばSSNの取得と自動車免許取得の順番はどっちが先?など、アクションごとの依存関係がよく見通せていませんでした。 せっかくなので、この情報を体系的にまとめてみようと思います。今後移住してくる方の参考に、少しでもなればと思います。 また、当たり前のことではありますが前提条件(ビザの種類や経済状況、支援してもらえる外部サービスの有無など)は個人ごとに異なります。私の情報を参考に、みなさんご自身の前提に当てはめて考えてみると良いと思います。 まとめると、こういうことらしい 移住にあたっての「するべきこと」と、それらの依存関係です。 グレーにしたものは必須ではないですが、やっておくと便利と思います。 ごちゃごちゃしてますね。それぞれ、詳しく見てみます。 目次:   家とクルマ   銀行口座とクレジットカード   ケータイとインターネット  ◆家とクルマ さて、何よりもまず家。渡米直後はホテルに暮らすこともできるでしょうけれど、あまり長引くと家賃より高いお金を払い続けなければなりません。早く落ち着いた生活を始めるためにも、家を最優先に進めるのが良いと思います。 また、実は住居の契約にあたってはビザおよび居住権は必須ではないようです。不思議なようにも思えますが、投資目的で契約するような人もいるのでしょうね。物件によってはビザを確認せずに契約出来る...

フィットネストラッカーアプリを比較してみた、という話

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意外と差があるもんですね 今回比較するアプリ3種、左からFitbit、Google Fit、Runtastic ちょっと自分の体重…というか腹回りというか首(顔)回りの肉付きが気になってきたので(顔の肉ってどうやって落とすんじゃー!)、多少ムリヤリにでも全体的に脂肪を落とそうと決意。 せっかくですから、楽しみながら、時には目的と手段を意図的に入れ替えながら、ガジェットやらスマホアプリやらで遊んでみよう、と思い立ち、いろいろ調べてみました。 今回はその中から、特に外部ツール無しでも使えるフィットネストラッカーアプリを比較しての考察についてまとめてみます。対象としたのは以下3つのアプリ。「なぜこの3つ?」と聞かれるとあまり考えていないのですが、Fitbit / Google FitはGoogle Playで検索した上位2つ、Runtasticは日本の友人たちが使っていたから、というだけの理由です。 Fitbit - Android版 / iPhone版 基本的には対応リストバンド/デバイスの存在が前提のアプリですが、基本的な機能はそれなしでも使えるようです。セットアップ時にすっ飛ばせます。 Google Fit - Android版 Google謹製のフィットネストラッカーアプリ。Fitbitをはじめ外部デバイスにも対応、もちろんそれらなしでAndroidスマートフォン単体でも十分な機能を使えます。UIがGoogleのMaterial Designベースで、GmailのInboxアプリと似た使い勝手で心地よいです。 Runtastic - Android版 / iPhone版 フィットネストラッカーとしては割と老舗の部類じゃないかと思います。どちらかというと友人たちとの共有や連携が強い印象、一部の機能は有料版のみサポートです。 いきなり比較表 まどろっこしいことは嫌いな私なので、いきなり一覧表に行きます。◎は完璧、○は実用上問題ないけどもう一工夫欲しい、▲はイマイチ、空欄は未対応です。 各アプリの機能比較 2016/03/20時点の最新版をベースに比較しています Fitbit Google...

クラウドファンディングを通して見る、モノづくりの難しさ、という話

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クラウドファンディングって? 私が出資したプロジェクト、ZNAPSのプロジェクトTOPページ。 出典: KickStarter ZNAPS project page クラウドファンディング。ごく端的に言うと「一般個人が、ごく少額からアーティストやクリエイター、モノづくりプロジェクトに出資できる枠組み」とでも言いましょうか。ノンフィクションや ドキュメンタリー映画 (リンク先は捕鯨の世論に関するドキュメンタリー映画制作プロジェクト)といった社会性のあるものや、 ガジェットやスマートフォン周辺機器 (同、デジタル一眼レフのリモコン操作を可能にするガジェット)、あるいは、そこそこ 実績のある企業が新製品のテストマーケティングに使ったり (同、Pebble第二世代というスマートウォッチのプロジェクト)もするようです。 2013年くらいから日本でも立ち上がっていたようですね。さらっと検索してみたところ、MakuakeやReadyFor、CampFireといったサイト名が見つかりました。 仕組みは「アイデアややりたいことを持つ人が、そのコンセプトをWebサイト上で説明し、賛同してくれる人、欲しいと思う人、その人を応援したい人が出資する」ということ。 出資の見返りは、必ずしも製品や商品ではありません。例えば製品そのものは$500もする高額なものでも、例えば$20を出資するとプロジェクトの公式ロゴ入りTシャツなどがもらえる、というプランを用意する発起人さんもいたりします。 私が初めて出資したプロジェクト ZNAPS ZNAPSのコンセプトGIF。スマートフォン側、ケーブル側の両方にアダプタをつけます。 出典: KickStarter ZNAPS project page ある日、何気なくFacebookを眺めていたら流れてきたのが こちらのプロジェクト、ZNAPS 。Macbookに搭載されている、マグネット接続の電源ケーブル MagSafe をiPhone/Androidスマートフォンで実現するというプロジェクトです。日本からも2700人ほどが出資しているようなので、このポストをご覧の方にももしかしたら出資されている方もおられるかもしれませんね。 iPhone/iPad/Androidを複数台持っていて、そこそこ...

片づけ導師さんのビジネスリーダーとしての資質、という話

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著者さん、相当アタマいいわ… 写真は本文と関係ありません。ただのフリー素材です。 普段めったに本を読まない私ですが、 こんまりさんの評価が国際的に高まっている というニュースを拝見し、さてはて何がそんなに世の女性たち(男性クライアントも少なからずいらっしゃるようですが)を惹きつけるのか…という興味本位から、初版出版から遅れること5年にして読んでみました。 私自身は散らかすこともありますが、 とはいえ「片付けられない」という悩みも持っていないので「こんまりメソッド」そのものにはあまり興味がない。どちらかというと、著者さん本人への興味で読みました。 なので、本稿では彼女の片づける方法については一切触れません。ここでは、著書から伺える著者さん本人について考察してみます。 右脳と左脳の高度な融合 著書を読み終えて、私が感じているのは以下のような項目です。 著者さんは「右脳と左脳のバランスがよく、双方の感覚が極端に高い」ということ その結果、一般の方からすると第六感を持っているようにも見える もし幼少期の体験が少し違っていたら、著名なビジネスリーダーになっていたんじゃないか これらについて、少し深く考えてみたいと思います。 1. 右脳と左脳って? 右脳と左脳 / 手 Freepikによるベクターデザイン  ちなみに私が認識している右脳と左脳の違いは 右脳: 芸術、感性、感情などをつかさどるもの 左脳: 言語、計算、論理などをつかさどるもの です。 私がビジネスコンサルタントをしていた頃、この「右脳と左脳のバランス」は仕事で叩き込まれました。 問題分析、問題解決をしていく上で、理屈や論理的思考、言葉だけではダメ。 感性、ヒラメキ、カンだけでもダメ。その両方がバランスよく高度に融合する思考能力をクライアントは期待している、と。 どちらかというと左脳型で、論理的思考に極端に寄っていた私の思考回路はその頃にずいぶんダメ出しをされたものです。論理的に分析して自分なりの解を導いても「何か気持ち悪い」という理由で上司に突っ返された。「どこがどんな風に気持ち悪いのでしょう?」と聞いても「よく分からん。もうちょっと考えてみて」と言われるだけ。これ、右脳的です。 で、ウンウン唸って考...